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父の日に贈るメッセージ?

不器用な人だった。愚直で正義感がやたらと強く、強烈な男尊女卑信者だった。そんな父も昨年亡くなった。自分の場合、つらい記憶ばかりがある。少なくとも、名前は毎回間違える、こっちの価値観は一切通用しない。家のすべては父の思想の下にあったようなものだ。

が、母も輪にかけて我意の強い人だった。それだけに我慢も人一倍だったろう。その母が亡くなってから、父は急速に弱くなっていった。酒害がひどくなった。飲んでいないと手が震えていた。

そして、そんな父が少年だった頃の自分にただひとつだけ助言を求めたことがある。
「老いた者が組織に残る、というのはどういうことか?」
自分がやたら兵法に詳しい変な少年だったことを知っていたからだろう。
ある日、突然、帰宅するなりそんな質問をぶつけてきた。酒も飲んでいない。こんな特殊な質問の仕方をすることなど皆無だった人の問い。まるで中国古典に出てきそうな問いの仕方だった。
「老いた者は次の世代の成長を阻む。上が詰まっていれば下は上にのぼれない」
自分は間髪入れずに答えてしまった。
答えてからハッとした。プライドがおそろしく高い父が怒るのではないか、と思った。そもそも、こんな生意気なことを言う少年だったのだ、僕は。

だけど、父は
「そうか」
と言うと、間もなく、自分から希望退職に応募し、いったん退職して子会社の方に移った。それを聞いて、妙にそのときの問答に納得してしまったものだ。

きっと、父にとって生きることは戦いだったのだろう。だから、酒を飲む。神経が休まらないからだ。父は晩年、グライダーを好み、空を飛ぶことを趣味とした。何から解放されたかったのか。

少なくとも今の自分に、父に贈るメッセージは思いつかない。推測の先にいる相手だったからだ。その距離を埋めるには、僕はまだ人生経験が足りない。。。
by bewsite | 2004-06-14 13:51 | トラックバックテーマ


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